憲法を改正するとどうなるの?

憲法って何のためにあるの?

昔々、遠く海を越えた国々に、悪い王様たちがたくさんいました。

 

王様たちは、はじめは、心も優しく思いやりがありましたが、やがて「力」を持つようになると、だんだん人が変わり、国民をいじめるようになったのです。国民の財産を奪う王様もいました。国民の自由を奪う王様もいました。また、国民を戦争へ送ってしまう王様もいました。そして、逆らう人たちを牢獄へつないだり、殺してしまう王様まで現れました。

 

困り果てた国民たちは、ついに力を合わせて、武力で王様たちを倒し、たくさんの死者が出ました。

王様たちを倒した後、国民たちは、もう二度とこんなひどいことが起きないようにするためにはどうしたらよいか話し合いました。

そのとき、あるアイデアが浮かびました。選挙で国民の代表者を選んで、その代表者に国の政治を任せようというものです。

 

しかし、ある人が言いました。

 

「はじめは心の優しい王様たちも、力を持つようになったら国民をいじめるようになった。たとえ選挙で代表者を選んでも同じことが起きるだろう。」

 

すると、別のある人が言いました。

 

「それなら、あらかじめ、代表者がやってはいけないことをルールとして決めておいて、代表者はそのルールに絶対に従うことにすればよいだろう。」

 

これには多くの人たちが賛成して、どの国も、ほぼ同じようなルールを作り、代表者もそのルールをきちんと守りました。

 

そのため、遠く海を越えた国々では、以前のように国民をいじめる人が現れなくなったそうです。

 

物語りはここまでです。

ところで、この物語りに登場する「遠く海を越えた国々」とは、18世紀の欧米各国で、国民をいじめないように代表者が守らなければいけないルール、それが「憲法」なのです。

 

権力者というものは、放っておくと必ず国民の自由や権利を奪って国民を苦しめるのが人類の歴史です。そうならないように、あらかじめ権力者が守るべきルールを定めて、権力者から私たち国民の人権(=人が生まれながらに有する権利)を守るための仕組み、それが憲法なのです。

 

一般的に法律といえば、私たち「国民」をしばるものが多いです。しかし、憲法は、国民ではなく政治家などの権力者をしばるもので、それは権力者から国民の人権を守るためにあるのです。これは、かつて王様たちが国民をいじめたことへの深い反省から生まれたアイデアで、このような考え方を立憲主義といいます。

 

私たちが日頃、だれからも邪魔されることなく、好きな服を着て、好きな物を食べて、自由に話すことができるのは、すべてこの憲法のおかげなのです。

日本の憲法はどう変わるの?

自民党は、今、その憲法を改正しようとしているのです。もちろん、改正すること自体が悪いことではありません。問題は、何をどのように改正しようとしているかです。自民党の改正案がどのようなものか、それを知らずにいることは、私たち国民にとっては自殺行為です。

 

まずは、自民党の憲法改正案のすべてが、一発でわかるPDFを こちら から自由にダウンロードできるので、ぜひご覧ください。

改正は非常に多岐にわたっていますが、その中でも特に重要な改正点のみ以下に列挙します。

 

①言論の自由をはじめすべての人権が「公益及び公の秩序」という全体主義的であいまいな規準によって大きく制限されます(草案12条・13条・21条・29条参照)。

 

②現行憲法で絶対に禁止されている拷問や残虐な刑罰も許されます(草案36条参照)。

 

③国防軍が創設され、国民の国防の義務が記され、徴兵制の導入や集団的自衛権の行使も解釈上可能になります(前文・9条の2及び3参照)。

 

④徴兵制に逆らえば死刑等の極刑を課すことも自民党幹部が認めています(石破茂衆議院議員・2013年7月16日東京新聞)。

 

⑤内閣による緊急事態宣言により、憲法上の人権はすべて、時の政権によってほぼ自由に奪うことができます(草案98条・99条参照)。

 

⑥選挙における「一人一票制」の原則を廃止し、議員定数不均衡を大きく容認し、自民党による独裁政権への道を切り開こうとしています(草案47条参照)。

 

⑦裁判官に対する厚い身分保障を廃止し、裁判官は政府の言うなりになります(草案79条・80条参照)。

 

⑧地方自治を大きく制限し、中央集権国家体制を目指しています(草案92条~97条参照)

 

その他、近代国家では類をみないほど人権を否定する内容となっています。

 

とくに、私たちが知っておかなければならないことは、上記①~⑧で明らかなように、この改正草案は、「権力者が憲法にしばられる」という立憲主義そのものを破壊しようとしていることです。「これは、もはや憲法ではない」と指摘する学者がいるのはそのためです。

 

そして、ひとたびこのように立憲主義が破壊されてしまうと、再び敗戦の憂き目を見るか、革命でも起きない限り、元へもどすことはほぼ不可能だと言われています。なぜならば、それまで憲法が保障していた言論の自由も選挙権も既になくなっているため、国民の意見や投票によって政治家を取り換えることが、もはやできないからです。つまり、立憲主義の破壊によって、権力者の暴走を止めるものが何一つ無くなってしまうからです。

 

ご承知のように、自民党・安倍政権は憲法を改正する前から、不当な報道規制をしたり、自衛隊を海外派兵したり、野党が要求する臨時国会を開かなかったり、「共謀罪」法案という恐ろしい法律を作る等、憲法違反を平然と繰り返しています。これが本当に憲法改正ともなれば、彼らがどんなことをしでかすかは容易に想像できるでしょう。日本が北朝鮮のような恐ろしい国になる可能性も十分にあるのです。

ちょっと補足

※上記についての補足

 

現行憲法は、「個人の尊厳」を最大の価値として、14条以下の各人権については、最大の尊重を必要としながらも、それらは「公共の福祉」による制約があることを規定しています(12条・13条)。

 

この「公共の福祉」の意味については諸説ありますが、「人権と人権がぶつかったときの調整」と理解するのが今日の通説です。たとえば、マスコミによる報道の自由を無制限に認めてしまうと、取材の対象となった個人のプライバシー権が侵害されるような場面では、報道の自由も制約を受ける、というのが典型例です。決して、「国益」とか「社会全体のため」という意味ではありません。従って、現行憲法は、「人権を制限するものは人権だけである」という思想に立っているわけです。

 

しかし、自民党改正案では、この「公共の福祉」という文言が「公益及び公の秩序」に変更されています。これにより、改正案では、人権を制限するものは人権だけでなく、「公益及び公の秩序」という全体主義的であいまいな基準によっても制限されることになります。

 

この点、自民党は、これまでの通説的な「公共の福祉」論では、個人の経済的自由権を制約する災害対策基本法63条や国民保護法114条等が、違憲になりかねないとして、改正の必要性を訴えています。

 

たしかに、現行憲法の解釈からすると右各法律は違憲の疑いがあります。しかし、そもそも違憲の疑いのある法律を憲法改正手続きを経ずに制定したこと自体が、まず非難されなければいけません。それは、2015年の安保法制定と同様、その法律の必要性を論ずる前に立憲主義の破壊だからです。

 

また、災害対策基本法63条や国民保護法114条は経済的自由権の制約という場面であるのに、何ゆえに、経済的自由権を定めた22条や29条だけでなく、人権一般についての総論的な規定である13条まで改正する必要があるのでしょうか。

 

さらに問題なのは、精神的自由権の中でも特に民主主義の不可欠の前提とされている表現の自由を保障する21条において、この「公益および公の秩序」による制約を明記したことです。これは、独裁政権にとって表現の自由こそが最大の敵であることから、とくにこれを厳しく制限し、政府に反対する者を徹底的に排除しようとする趣旨です。

 

※上記についての補足

 

現行憲法の36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と規定しています。

 

しかし、自民党の改正案では、この「絶対」という文言が削除されています。これは一体どういうことか、少し詳しく解説します。

 

前述のように現行憲法は、「個人の尊厳」を最高価値として、①精神的自由権、②身体的自由権、③経済的自由権等を保障しており、このうち、36条は身体的自由権として位置づけられています。

 

ただし、これらの人権はすべて、無制限に認められるわけではなく、「公共の福祉」による制約を受けることが、12条、13条で明記されていることも前述の通りです。

 

つまり、現行憲法は、各人権規定で逐一「公共の福祉」による制約を定めるというかたちをとらずに、12条と13条の総論においてその制約を一般的に定めるというかたちをとっているのです。そのため、身体的自由権においても、各規定においてわざわざ明記されずとも当然に「公共の福祉」による制約を受けるという解釈が可能になるわけです。

 

しかし、公務員による拷問や残虐な刑罰についてだけは、「公共の福祉」という理由をもってしても許されることがあってはならないことから、これを一切禁止するためにわざわざ「絶対」という文言を入れることによって、12条及び13条による制約を排除しているわけです(ちなみに現行憲法が「絶対」という文言を用いているのはこの1ケ条だけです)。

 

したがって、自民党改正案のように、この「絶対」という文言を削除してしまうと、12条及び13条による制約が36条にも及んでしまい、公務員による拷問や残虐な刑罰が、「公共の福祉」の名のもとに許されることになってしまうのです。

 

なお、自民党改正案では、この「公共の福祉」をさらに「公益及び公の秩序」に変更していることは前述の通りです。

 

つまり、改正草案の12条、13条、36条を併せて解釈すると、「国益のためなら、政府による拷問や残虐な刑罰も許される」ということになり、それは、独裁政権が政敵を徹底的に弾圧するためには、どうしても不可欠な改正なのです。

 

※上記③④についての補足

 

現行の憲法解釈としては、徴兵制を違憲とするのが通説です。

 

その根拠は、

 

①9条の戦力の不保持
②13条の個人の尊厳
③18条の「意に反する苦役」の禁止

 

あたりです。

 

しかし、自民党の改正草案では、そうはいかないのです。

 

まず、①の戦力不保持条項は削除されています。また、②の個人の尊厳についても、「公益及び公の秩序」によって制限されています。

 

唯一、③の「意に反する苦役」の禁止だけは現行憲法と同一文言なので、徴兵制がこの「意に反する苦役」にあたるか否かが争点になります。

 

たしかに、現行憲法下では、徴兵制はこの「意に反する苦役」にあたると解するのが通説で、歴代の政府見解もそうでした。

 

しかし、法文というものは、たとえ、同一文言であっても異なる意味に解釈することは十分に可能です。とくに憲法18条の「意に反する苦役」に徴兵制が含まれるか否かについては、その成り立ちの経緯も含めて憲法全体の理解の中で判断されなければいけません。

 

この点、自民党改正草案では、前述のように、戦力不保持条項を削除した上、前文と9条の3において、国民の国防義務を明記し、さらに、9条の2では、国防軍の「組織」を法律事項としています。

 

また、現行憲法18条の「意に反する苦役」という文言は、合衆国憲法13条の

 

Neither slavery nor involuntary servitude, except as a punishment for crime whereof the party shall have been duly convicted, shall exist within the United States, or any place subject to their jurisdiction.

 

という文言に由来しており、アメリカ連邦最高裁は、徴兵制はこの「involuntary servitude」にはあたらないと判示しています(1916年2月)。

 

とすると、少なくとも自民党改正草案では、徴兵制を合憲と解釈することは十分に可能になります。

 

ちなみに、安倍政権は、「徴兵制は改正草案においても違憲である」と明言していますが、集団的自衛権の問題と同様に、憲法解釈に関する政府見解は時代によって大きく変化し、これまで何度も嘘をついてきた安倍政権が前言を守る保証はどこにもなく、すでに自民党の石破議員が徴兵制を容認する旨の発言をしていることは周知のことです。

 

なお、「現代ハイテク戦争の時代に徴兵制はなじまない」として、日本においても徴兵制はあり得ないと考える人もいますが、そんな保証はどこにもないことは、こちら を読んでいただければよくわかります。

 

また、第二次安倍内閣が発足した2012年以来、自衛官の数が4年連続で減少しており、安倍政権が広報で自衛官の募集を急いでいることは周知のことです。このまま自衛官減少がすすめば、政府が徴兵制の必要性を訴え出すことは十分にあり得ることなのです。

※上記についての補足 

 

自民党による憲法改正案の第9章「緊急事態(98条・99条)」について解説します。
 
結論から言うと、この条項によって、戦争やクーデターでも起きない限り、自民党はほぼ半永久的に政権を独占し、国民の基本的人権や地方自治は事実上完全に停止します。
 
まず、内閣総理大臣がこの緊急事態宣言を発することができる要件は、
 
「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」
 
となっています。「内乱等」「地震等」「その他の法律で定める緊急事態」という文言からわかるように、要件は不特定でゆるいため、緊急事態宣言を発するのは非常に簡単です。ご承知のように安倍政権は、現行憲法さえ無視して違憲な法律を次から次へと強行採決しているのですから、こんな要件は、あって無いようなものと言ってよいでしょう。
 
また、改憲案では、緊急事態宣言の発令には国会の承認が必要とされていますが、「事後」でもよいとされている上、現在衆参両院において過半数を大きく超える自民党が支配する国会では、右承認はあっけなく通過するでしょう。
 
そして、緊急事態宣言が発せられると、「何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に
係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければなら」ず、事実上国民の基本的人権は停止します。
 
また、「地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる」とし、完全な中央集権的独裁体制を樹立することができます。
 
さらに、「内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行」うこともできるため、国家財政が破綻するまで国民の年金や血税が消失する危険性もあります。
 
ところで、この緊急事態宣言はどのくらい継続できるのかというと、法文上「百日」となっています。しかし、これも国会の承認によって何度でも更新できます。
 
もちろん、選挙によって自民党を倒せば問題ないと考える方もみえるでしょう。しかし、残念ながら、「緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる。」と規定され、選挙権も完全に停止されるため、政権交代は不可能なのです。
 
以上のように、自民党改憲案の緊急事態条項によって、自民党はほぼ半永久的に一党独裁政権を維持することが可能で、安倍政権は、この緊急事態条項を真っ先に新憲法に加えたいと頑張っています。

憲法は本当に改正されるの?

すでに多くの人がご存知かと思いますが、昨年7月の参院選では、憲法改正発議に必要な「各議院の総議員の3分の2」を改憲派が獲得してしまいました。

 

もちろん、国会で発議されたからと言ってすぐに憲法が改正されるわけではありません。その後国民投票によって改正されるか否かが決められるわけですが、安倍政権が強行採決した「国民投票法」によると、改正に必要なのは「有権者の過半数」ではなく「有効投票の過半数」とされ、しかも最低投票数による制限もありません。なので、改正のためのハードルは極めて低いと言っていいでしょう。

 

ちなみに、昨年7月の参院選の比例区の結果から、憲法改正の国民投票の結果を予測してみました。

 

比例区における各党の獲得票数は次の通りでした。

 

※自民党…20113130
◆民進党…11749913
※公明党…7571491
◆共産党…6015501
※おおさか維新…5152992
◆社民党…1535915
◆生活…1067214
※日本のこころ…733892
◆支持政党なし…647052
◆改革…580583
◆国民怒り…466512
※幸福実現…366784

 

このうち、※印のついた5党は改憲に賛成するものとして、その合計数を全体数で割ると、

 

33938289÷56000979=0.60603

 

となり、約60%ですので、過半数を楽に超えることになります。

 

もちろん、その他の票数が計算されていないこと、昨年の参院選は憲法改正の争点隠しがあったこと、国民による今後の理解の深まり等から、上記予測が必ずしも当たるとは言い難いですが、非常に危険な状況であることは間違いありません。

 

安倍首相やそのとりまきの人たちの人格など今さら変えることはできません。今私たちが闘うべき最大の敵は、国民の「政治的無関心」です。

 

安倍首相は、2018年の9月までの任期中には改憲を実現するとのことなので、もうあまり時間がありません。それまでに一人でも多くの日本人に、憲法とその重要性を知ってもらうため、私はできるかぎりのことをしていきたいと思います。

 

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コメント: 4
  • #1

    阿南 ヒロシ (日曜日, 30 7月 2017)

    さすが「早稲田」の「法学部」ですね。(笑) 
    「憲法」に関する非常に判り易い解説だと思います。

    なお私は「阪大・法学部」を卒業して、旧「司法試験」を11回受験し、「短答式試験」には9回合格したのですが「論文試験」に9回合格できず受験を断念したのでした。(笑) なお「同級生」からは「3人」が「高等裁判所・判事」になったのですが、「最高裁判事」は居ない様です。 (笑) 熊本市・67歳・男性

  • #2

    EA作成代行 (日曜日, 30 7月 2017 01:31)

    >阿南さん

    コメントありがとうございます。

    お互い法学部に在籍したのは、きっと人のため世のために何かできるように神様が導いてくれたからだと認識しております。可能な範囲でこのページの拡散をお願いいたします。

    私も大の映画ファンです。貴サイトもしっかり楽しませていただきます。

  • #3

    Yositeru Ohnaka (月曜日, 14 8月 2017 16:32)

    よくわかりました。私の家族及び知人たちに、憲法改正について関心を持つよう働きかけたいと思います。

  • #4

    EA作成代行 (月曜日, 14 8月 2017 17:15)

    >Yositeru Ohnakaさん

    コメントありがとうございます。

    リンクを使って、なるべく大勢の方へお伝えください。

    よろしくお願いいたします。

    EA作成代行